手嶋龍一 佐藤優 対談 独裁の宴 世界の歪みを読み解く

 2017年8月29日北朝鮮弾道ミサイルを発射を受けて小野寺防衛大臣の「ミサイルが日本の領空を2分間飛翔した」という発言は、問題。領空とはおよそ高度100キロメートルくらい、ミサイルは550キロメートル。国際法という武器を身に着けていない外交官がいまや外務省の中堅幹部になっているというのは、恐ろしいこと。

 9月21日コロンビア大学河野太郎外相が講演して「北朝鮮と国交のある160以上の国々は、断交すべきだ」と発言した。他国に対して「どの国と外交関係を持て、持つな」などと指図することが許されないのは、国際法のイロハの話だ。

 イギリスは平壌に大使館を持っている。アメリカと貴重なインテリジェンスを共有する所謂「5-Eyes」のなかで、その中核を占めるイギリスが北朝鮮国内に触角を持っている大切さをイギリスの専門家は痛いほど分かっている。

 5-Eyesというのは、「UKUSA協定」というインテリジェンスに関する取り決めを結んでいるイギリス、アメリカ、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドの5か国。

 2017年9月1日に創価学会原田稔会長が「創価学会会憲」を提案して、11月18日に施行された。

 平和の教団、世界教団なんだと。国際組織であるSGI創価学会インターナショナル)も「日蓮世界宗創価学会」とする。

 世界宗教化を目指す創価学会。台湾と韓国にSGIは拠点を持っていて、布教のメインターゲットは中国。

 

奥山俊宏著 パラダイス文書 連鎖する内部告発、パナマ文書を経て「調査報道」がいま暴く

 弁護士と会計士の支援を得て法務と税務の最新知識を使い、タックスヘイブンや租税特別措置に抜け道を探して巧妙かつ適法に租税を回避するのは、経済主体としては当然の行動かもしれない。しかし、そのような行動が可能なのは大企業や超富裕層のみで、そのしわ寄せは中流階級に向かう。

 2016年4月の「パナマ文書」の報道が始まった2日後、米政府のオバマ大統領(当時)が喝破した。

 「パナマ文書」報道は、第一に、「過去最大の内部告発」発端の報道。

第二に、「史上最大の調査報道」

第三に、非営利組織、ネットメディアによる報道の中で「最良の成功例」

 「パナマ文書」には、日本人らしき名前は300ほどだが、2017年11月報道された「パラダイス文書」には1000を超えるが、その本当の数字は数千なのか、1万を超えるかいまだ不明だ。

 内部告発は調査報道の原動力であり、調査報道で盛り上がった世論が新たな内部告発を喚起し、それがまた新たな調査報道へとつながっていく。情報技術の進歩もあって、年々、内部告発の質は向上し、その量もメガバイト単位からギガバイト単位、テラバイト単位へと増大してきている。それに呼応するように、調査報道はかっての「個人プレー」「職人気質」のスタイルを脱して、チームを母体とするようになり、それがさらに国際化し、その規模を大きくしている。非営利の報道機関が台頭し、より公的な立場から、調査報道記者たちや各報道機関に協働を促し、取材・報プロジェクトの規模拡大を後押ししている。

田中優子 松岡正剛対談 日本問答

 9条の内容は軍事強国を基準にすると、とても普遍的とは言えないから、「普通の国になりたい」などと言っては9条を変えることを意図する。ところが9条はパリ不戦条約の流れを汲むもう一つの普遍であることを、多くの人は知っている。つまり世界のデュアルが交差する点に9条がある。常にその結び目に問い、その矛盾に苦しみ、思考し、方策を何とか生み出す。この思考と工夫が日本人を鍛える。軍事に頼れば強くなるといったことは幻想で、結局何も強くしないことは、歴史が証明している。

前田速夫著 「新しき村」の年 <愚者の園>の真実

 一世紀前、武者小路実篤を中心として「新しき村」が創設された。戦争や暴動など国内外が騒然とする時代にあって、「人類共生」の夢を掲げた農村共同体は、土地の移転、人間関係による内紛、実篤の離村と死没など幾度も危機に晒されながらも、着実な発展を遂げていく。世界的にも類例のないユートピア実践の軌跡。

 「ある青年の夢」には、戦争の恐怖と無意味だけでなく、敵対する国同士は、常に相手国の侵入を恐れており、自国の防衛を口実に軍備の増強を競い、それが真っ直ぐ戦争につながるありさま(今日の険悪な国際情勢も変わらない)が語られている。そればかりか、「人間がまだ人類的にまで成長しきれない内は戦争が止まないものだと思っています。今のまま国家が存在してゆけばますます戦争がさかんになると思います」と、民衆の覚醒による国家の解体をも示唆する。

 画家の中川一政は、仙川の実篤邸と隣り合って記念館がオープンする際、「この人は小説を書いたが小説家と言う言葉で縛られない 哲学者思想家乃至宗教家と云ってもそぐはない そんな言葉に縛られないところを此人は歩いた」との揮毫を寄せている。

 

鎌田浩毅著 日本の地下で何が起きているのか 

 現在の地震と噴火の頻発は「3.11」によって地盤に加えられた歪を解消しようとしているのだ。もはや日本列島は1000年ぶりの「大地変動の時代」が始まってしまい、今後の数10年は地震と噴火が止むことはないだろう。

 日本の国土面積は世界の陸地の0.28%しかないのも拘わらず、地球上で起こるM6以上の地震の20%が日本列島で起きている。

 富士山は平均50年程の間隔で噴火していたことが分かってきた。一方、富士山は1707年から現在まで、300年間も噴火していない。もし長期間ため込んだマグマが一気に噴出したら、江戸時代のような大噴火になる可能性も否定できない。

 物理学者の寺田寅彦は、日本列島に暮らす脆弱性を指摘した最初の人物である。

寺田は、「文明が進めば進むほど自然の暴威による災害がその劇烈の度を増す。文明が進むに従って人間が次第に自然を征服しようとする野心を生じ自然の暴威を封じ込めたつもりになっている」と。

奥野修司、徳山大樹著 怖い中国食品、不気味なアメリカ食品

 アメリカから輸入される牛肉には、国産牛よりも600倍もの女性ホルモンが含まれている。しかし、計測すれば輸入禁止にせざるを得ず、そうなればアメリカと必ずトラブルになるから、食品に含まれる女性ホルモンを測ろうともしない。

 日本と対照的なのはEUである。

 EUは、域内の国民の安全を考慮し、今もアメリカ産牛肉の輸入を禁止している。

 アメリカは、EUの農産物に課徴金をかけて報復したが、EUはそれでも禁止措置を解かなかった。

 豚肉はもっと危険だ。アメリカ食品医薬品局は、アメリカで流通している豚肉の69%が抗生物質に耐性を持つ菌に汚染されていると警告している。

 腸内細菌には抗生物質で簡単に死んでしまう細菌と、抗生物質に耐性を持っている細菌があり、抗生物質が体内に入ると、抗生物質に弱い細菌は次々と死んで細菌の種類が激減して腸内細菌叢が変わり、これまで保っていた腸内のバランスが一気に崩れてしまう。バランスが崩れることが、アレルギー疾患、喘息、肥満、自閉症潰瘍性大腸炎など、現代病といわれる病の発症に繫がっている。

 2018年4月に廃止される主要農作物種子法は、種子の遺伝資源を守り、安い価格で提供してきた。それを廃止し、これまで蓄えられてきた種子情報は民間に譲渡される。種子の価格は確実に上昇するだろう。喜ぶのは、種子ビジネスで大儲けしている海外の巨大バイテク企業だけなのではないか。

 中国では生活汚水の9割以上、工業排水の3分の1以上が未処理で河川に流されているという報告があり、とりわけ深刻なのは南部、それも長江と黄河下流だ。

 中国では10年ほど前から「がん村」の存在が噂されてきた。「がん村」というのは、がんの発症率が異常に高く、村民の多くが40代で死亡するという深刻な状態の集落のことだ。現在、中国全土で500ヵ所以上あると言われている。

 学校給食の構造的問題に大きな影響を与えたのが、中曽根内閣時代の85年に出された、新自由主義を背景とする

「合理化通知」である。①給食の民間委託への移行、②非正規調理員の採用、③自校方式からセンター方式へ、

コストダウンを追及した結果、学校給食は外食産業と同列になったともいえる。そして、中国食材が多く入り込んできた。

 もしわが子の給食がおかしいと思ったら、親が糾すしかない。親が声をあげれば学校給食は変えられる。

 FTAやTPPは、消費者にきちんと情報を公開するという流れに逆行するものだ。

 輸入する場合、TPPは輸入検疫を簡素化し、輸入する加盟国の検疫を尊重するのが前提だから、輸入国の検疫はどんどん簡素化され、ほとんど行われなくなる。検査がほとんどされないなら、アメリカで何か問題が起こっても、すでに日本で消費されているということになりかねない。

 

西川芳昭著 種子が消えればあなたも消える 共有か独占か

 2017年2月10日に、「主要農作物種子法を廃止する法律案」の第193回国会への提出が閣議で了承されたというニュースが種子を大切に考えている仲間たちの間を駆け巡った。

 干ばつや砂漠化によって、毎年、穀物栽培で2000万トンに相当する1200万haの農地が失われている。

 また、確認されている8300の動物種のうち、8%は絶滅し、22%が絶滅の危険に晒されている。

 色々な形の種子の供給や調達の方法を支える条件を整えていた重要な法律の一つである種子法をなくすことによって、種子のシステムの多様性が失われる。

 主要農作物の種子システムの弱体化は、全国の小規模農家や条件不利地の農業・農村を衰退させるだけではない。地域の農業生態系という、農の営みがつくり上げてきた環境が破壊されてしまえば、結果的には産業的な農業システムの弱体化につながる。

 2014年は国連が決めた国際家族農業年であった。家族農業の特徴は、伝統的な農法を大切にしながら、比較的小さな土地を多くの労働力を投下して利用する。地域で食料が安定的に生産・共有されると、地域が安定し、紛争の芽を摘む。

 こうしたことを念頭に、FAOは各国が家族型農業指針の政策を採るように促している。

 食のシステムについて発信し続けている英国のジェフ・タンジー氏は、知的財産権を重視する法的枠組みは民間企業の産業的農業への参入の動機づけとなり、短期的には経済発展が可能であるが、種子のシステムのような本来公的なものの私有化は生態的には

持続不可能な社会を生み出すと警告している。