本村凌ニ 監修 30の「王」からよむ世界史
太宗
隋に続いて中国の統一王朝となった唐。隋が僅か37年で崩壊したのに対し、唐は289年もの長きにわたって繁栄を続けた。その基礎を築いたのが、李世民こと第2代皇帝・太宗である。太宗の死後にまとめられた「貞観政要」は源頼朝や徳川家康が治世の参考にした。
永楽帝
元に代わって中国大陸を統治した明は、およそ100年ぶりに誕生した漢民族の王朝。
清朝滅亡まで皇宮として使われ、現在のランドマークとも呼べる紫禁城は、明王朝の第3代皇帝・永楽帝が造営し、1420年に完成したもの。
永楽帝の父である洪武帝は非常に猜疑心が強く、31年の皇帝在位期間に謀反の疑いなどで処刑した家臣らは、連座した一族も含めると数万人に上る。
永楽帝も、高名な儒学者の方孝ジュの一族・門人873人を処刑している。
スレイマン一世
中世の後期、地中海とインド洋の双方に面する西アジアの主導権は、アラブ族からトルコ族へと移る。オスマン・トルコ帝国は、東ローマ帝国(ビザンツ帝国)の築いた国際都市コンスタンティノープルを引き継ぎ、北アフリカから東欧、アラビア半島までを支配下に置いた。
その最盛期を築いた第10代皇帝スレイマン一世の治世では、キリスト教徒やユダヤ教徒は保護され、国境や民族にとらわれることなく優秀な人材を活用し、多文化共生の帝国が成立した。
井上泰浩 著 アメリカの原爆神話と情報操作
アメリカでは、2017年天文学的予算(1兆ドル)を費やし精度と殺傷力をさらに高める核兵器のの近代化が動き出した。
広島・長崎に投下された原爆について、いまなお多数のアメリカ国民が5つの神話 ①事前に警告し軍事基地を破壊した②その衝撃で日本はすぐに降伏した③アメリカ人100万人、さらに多くの日本人の命を救った原爆は救世主だ④アメリカは神に託されて慈悲深い行いをした⑤原爆による放射能の
影響はほとんどない を信じている。
なぜこの根拠のない、嘘偽りの「神話」が信じ込まれることになったのか。
情報操作を組織的に計画実行したのはアメリカ政府と軍だが、世界で最も権威あるニューヨークタイムズ記者とハーヴァード大学長が大いに貢献していた。
様々な隠蔽だけでなく、視覚的な捏造として1947年には「マンハッタン計画のドキュメンタリー」と銘打った映画が公開された。
一条の光もある。オバマ大統領は2016年5月27日の広島訪問の際に、原爆神話の起源となったトルーマン大統領の原爆声明と相反する演説を行った。
ジャック・ペレッティ著 世界を変えた14の密約
1945年、ニューヨークのメトロポリタン生命保険会社の本社で働いていたルイ・ダブリンは顧客の保険料の支払額を見ていて体重が大きく影響していることに気付いた。そこで、契約者の体重の基準を切り下げて、それまで「太り過ぎ」に分類されていた人たちを、健康に害を及ぼす「肥満」に分類することにした。それを裏付ける科学的な指標としてBMIを作り出した。
1980年のバイ・ドール法は、製薬会社から大学研究室への直接の資金提供に門戸を開く法案だった。ハーバード大学のジョン・エイブラムソンは、「50年後にアメリカ市民はこの時を振り返り、政府が製薬会社に国民を売り渡した瞬間として思いだすだろう」と語った。
1958年にニューヨークで世界銀行によって「国家と投資家の間の紛争解決手続(ISDS)と呼ばれる法廷が設立された。巨大農業コングロマリットのカーギル/ADMは、児童の肥満を減らすためにソフトドリンクへの砂糖税を導入したメキシコを訴えて勝った。
渡邊哲也著 「米中関係」が決める5年後の日本経済
国際社会に悪影響をもたらす中国の租借権問題 国際間での融資については厳格な審査が行われる。その審査をクリアした後に政治・経済状況の急変によってデフォルトに陥った場合は、パリクラブ(債務国会合)と呼ばれる、パリで行われる国家間の債務滞納などに関する協議会で、その償還の延期や債務の減免などを認めるという制度がある。パリクラブは第二次世界大戦後、先進諸国が新興国への支援のあり方を検討し、先進国による一方的な搾取とならないよう、均衡のとれた発展を目的に築きあげたシステムといえる。ところが、このシステムを無視して、中国は民間の金銭貸借と同様の理屈を持ち込み、債務国の土地の権利を奪い取っている。 モリディブは、2019年にも中国への領土割譲に追い込まれるかも。
上垣外憲一著 鎖国前夜ラプソディ 惺窩と家康の「日本の大航海時代」
徳川の平和を実現した政治体制を作り出した家康、その平和の精神に広やかさと寛容さを与えた惺窩、二人相まって、日本の近世を飛び越して、近代が準備されたのである(徳川封建体制、鎖国体制は、徳川家光と林羅山の所産である)。科学技術と、人間中心主義、国際主義、家康と惺窩の桃山時代は、日本がある意味で世界文明の最先端に浮上した、鎖国前の輝ける時代だった。
家康の統治時代こそ、日本の海外貿易が最も栄えた時代であった。
大御所と言われた駿府時代にはフィリピン貿易を積極的に行った。
藤原惺窩晩年の極めて近代的な思想は、オーソドックスな朱子学とは大きく異なるものである。むしろ西洋18世紀の啓蒙思想、寛容の思想に極めて近い。朱子学の政治、外交思想の基本である中華と夷荻の差別、つまり華夷秩序を認めず、日本、中国、朝鮮、ベトナムは対等の国家であるとする。近代的な外交の基本は、大国、小国の区別なく、国々は国際法上、平等であり、対等の国家主権を有する。この近代国際関係の建前に惺窩の外交思想は一致する。
加納剛太編著 ディープ・イノベーション -起業工学が開く人類の新たな地平ー
シュンペーターは「イノベーション」を1911年に次のように定義した。
・顧客満足度の飛躍的向上
・その活動を通して社会の変革を起こす
ところが、日本では1985年の『経済白書』で「イノベーション」を「技術革新」と誤訳した。
正しくは、「市場のニーズを汲み取り、それに最適解を与え、顧客を満足させ、市場占有率を上げる。そしてそれが社会を変える」ということ。
石油はあと40年で枯渇すると予測されているが、銅はあと30年、銀は15年、インジウムに至ってはあと6年分しか埋蔵量がない。
その一方で、二酸化炭素などの温室効果ガスの排出削減は進んでいない。2008年に全世界で295億トンであった二酸化炭素の排出量は、このままいくと2050年には500億トンになってしまう。
産業の徹底的なパラダイムシフトが必要だ。低エネルギーで完全なリサイクルシステムを備えた産業を生み出す必要がある。
「成長」よりも「永続」を求め、いたずらに規模を大きくしない経営。経済原則だけでなく、「徳」という哲学の要素を柱に据えた経営。ここで必要になるのが「ディープ・イノベーション」