孫崎享著 これから世界はどうなるか 米国衰退と日本

 テロには歴史的な遠因とともに、基本的には、テロを誘発する直接の原因もあります。この原因を政治的手段によって解決することは可能です。政治的解決を図らない、政治的妥協を図らない、その代償がテロなのです。

 もし米国がオサマ・ビン・ラディンの「撤退要求」を認めていれば、米国同時多発テロ事件は起こっていなかった可能性が高い。現に、2003年のイラク戦争開始前に、米国はサウジアラビアから撤退しています。

 アイゼンハワー大統領は軍産複合体によって、米国が不要な戦争に突入する危険性を警告しました。けれど米国は、ベトナム戦争アフガニスタン戦争、イラク戦争と、自国の安全と必ずしも直結しない戦争に突入していきました。

 現在、軍事費の大半を占める補給部門を民間に移譲した米国では、民間契約会社は戦争があることによって利益を得る集団になっています。

 カントは、「いかなる国々も他の国の体制や統治に暴力を持って干渉してはならない」と述べ、人生の終わりに、「国際法を一歩ずつ限りない努力で発展させることを我々の義務とするよう」言い残した。

 19世紀の法律家、ヘンリー・メインは、「戦争の歴史は人類の歴史と同じくらい古いが、平和は近代の発明品」と言っている。

 各国国内事情をみると、通常、軍事力を主張するグループと、平和を主張するグループと併存しています。平和を求めるグループは相手国の平和を求めるグループと連携を図る努力が喫緊の課題です。