西川芳昭著 種子が消えればあなたも消える 共有か独占か

 2017年2月10日に、「主要農作物種子法を廃止する法律案」の第193回国会への提出が閣議で了承されたというニュースが種子を大切に考えている仲間たちの間を駆け巡った。

 干ばつや砂漠化によって、毎年、穀物栽培で2000万トンに相当する1200万haの農地が失われている。

 また、確認されている8300の動物種のうち、8%は絶滅し、22%が絶滅の危険に晒されている。

 色々な形の種子の供給や調達の方法を支える条件を整えていた重要な法律の一つである種子法をなくすことによって、種子のシステムの多様性が失われる。

 主要農作物の種子システムの弱体化は、全国の小規模農家や条件不利地の農業・農村を衰退させるだけではない。地域の農業生態系という、農の営みがつくり上げてきた環境が破壊されてしまえば、結果的には産業的な農業システムの弱体化につながる。

 2014年は国連が決めた国際家族農業年であった。家族農業の特徴は、伝統的な農法を大切にしながら、比較的小さな土地を多くの労働力を投下して利用する。地域で食料が安定的に生産・共有されると、地域が安定し、紛争の芽を摘む。

 こうしたことを念頭に、FAOは各国が家族型農業指針の政策を採るように促している。

 食のシステムについて発信し続けている英国のジェフ・タンジー氏は、知的財産権を重視する法的枠組みは民間企業の産業的農業への参入の動機づけとなり、短期的には経済発展が可能であるが、種子のシステムのような本来公的なものの私有化は生態的には

持続不可能な社会を生み出すと警告している。