奥山俊宏著 パラダイス文書 連鎖する内部告発、パナマ文書を経て「調査報道」がいま暴く

 弁護士と会計士の支援を得て法務と税務の最新知識を使い、タックスヘイブンや租税特別措置に抜け道を探して巧妙かつ適法に租税を回避するのは、経済主体としては当然の行動かもしれない。しかし、そのような行動が可能なのは大企業や超富裕層のみで、そのしわ寄せは中流階級に向かう。

 2016年4月の「パナマ文書」の報道が始まった2日後、米政府のオバマ大統領(当時)が喝破した。

 「パナマ文書」報道は、第一に、「過去最大の内部告発」発端の報道。

第二に、「史上最大の調査報道」

第三に、非営利組織、ネットメディアによる報道の中で「最良の成功例」

 「パナマ文書」には、日本人らしき名前は300ほどだが、2017年11月報道された「パラダイス文書」には1000を超えるが、その本当の数字は数千なのか、1万を超えるかいまだ不明だ。

 内部告発は調査報道の原動力であり、調査報道で盛り上がった世論が新たな内部告発を喚起し、それがまた新たな調査報道へとつながっていく。情報技術の進歩もあって、年々、内部告発の質は向上し、その量もメガバイト単位からギガバイト単位、テラバイト単位へと増大してきている。それに呼応するように、調査報道はかっての「個人プレー」「職人気質」のスタイルを脱して、チームを母体とするようになり、それがさらに国際化し、その規模を大きくしている。非営利の報道機関が台頭し、より公的な立場から、調査報道記者たちや各報道機関に協働を促し、取材・報プロジェクトの規模拡大を後押ししている。