加納剛太編著 ディープ・イノベーション -起業工学が開く人類の新たな地平ー

 シュンペーターは「イノベーション」を1911年に次のように定義した。

顧客満足度の飛躍的向上

・その活動を通して社会の変革を起こす

 ところが、日本では1985年の『経済白書』で「イノベーション」を「技術革新」と誤訳した。

 正しくは、「市場のニーズを汲み取り、それに最適解を与え、顧客を満足させ、市場占有率を上げる。そしてそれが社会を変える」ということ。

 石油はあと40年で枯渇すると予測されているが、銅はあと30年、銀は15年、インジウムに至ってはあと6年分しか埋蔵量がない。

 その一方で、二酸化炭素などの温室効果ガスの排出削減は進んでいない。2008年に全世界で295億トンであった二酸化炭素の排出量は、このままいくと2050年には500億トンになってしまう。

 産業の徹底的なパラダイムシフトが必要だ。低エネルギーで完全なリサイクルシステムを備えた産業を生み出す必要がある。

 「成長」よりも「永続」を求め、いたずらに規模を大きくしない経営。経済原則だけでなく、「徳」という哲学の要素を柱に据えた経営。ここで必要になるのが「ディープ・イノベーション