中西輝政著 日本人として知っておきたい「世界激変」の行方
アメリカがEUをつくろうと考えた、そもそもの動機は冷戦を戦うためである。これはASEANも日米安保、NATOも同じである。本質は「パックス・アメリカーナの副産物」といって差し支えない。
西ドイツをNATOに迎え入れるための布石として打たれた手が、欧州石炭鉄鋼共同体(ECSC)だった。又、アメリカはフランスと西ドイツ国内に、親米派を積極的に養成した。そのためにCIAが膨大な工作資金を費やしたことが公開された資料からわかっている。
「中露独の三国同盟」に日米同盟は対抗できるか
独露両国はすでに、天然ガスをはじめ、様々なエネルギー分野で運命共同体である。ドイツはエネルギーのおよそ4割を、ロシアからパイプラインで届けられる天然ガスに頼っているし、自動車や機械など工業製品の対露輸出に頼ってきたドイツにとってロシアは「上得意先」である。
フォルクスワーゲンは中国市場で圧倒的覇権を握り、またドイツの先端技術がAIやロボット技術を中心に、中国に入りだしている。そして中国はドイツから環境技術を導入するプロジェクトを動かし、国有企業を何社も立ち上げている。ベルリンにはエリート技術者の中国駐在員が増えている。
明治の日本に最大の外交危機を齎した、「三国干渉」(1895年)は、ドイツが中露双方を操って対日恫喝の行動にでたものだ。
国際関係の神髄というものは、19世紀も21世紀も核心においては変わりはない。