上垣外憲一著 鎖国前夜ラプソディ 惺窩と家康の「日本の大航海時代」

 徳川の平和を実現した政治体制を作り出した家康、その平和の精神に広やかさと寛容さを与えた惺窩、二人相まって、日本の近世を飛び越して、近代が準備されたのである(徳川封建体制、鎖国体制は、徳川家光林羅山の所産である)。科学技術と、人間中心主義、国際主義、家康と惺窩の桃山時代は、日本がある意味で世界文明の最先端に浮上した、鎖国前の輝ける時代だった。

 家康の統治時代こそ、日本の海外貿易が最も栄えた時代であった。

 大御所と言われた駿府時代にはフィリピン貿易を積極的に行った。

 藤原惺窩晩年の極めて近代的な思想は、オーソドックスな朱子学とは大きく異なるものである。むしろ西洋18世紀の啓蒙思想、寛容の思想に極めて近い。朱子学の政治、外交思想の基本である中華と夷荻の差別、つまり華夷秩序を認めず、日本、中国、朝鮮、ベトナムは対等の国家であるとする。近代的な外交の基本は、大国、小国の区別なく、国々は国際法上、平等であり、対等の国家主権を有する。この近代国際関係の建前に惺窩の外交思想は一致する。